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タチウオという魚。(捕食シーン&海遊館インタビュー)

タチウオ(太刀魚)という魚。

立って泳ぐから『立ちウオ』。刀のような形から『太刀ウオ』

神出鬼没で謎が多く、『幽霊魚(ゆうれいうお)』とも呼ばれる魚

漁師さんや遊漁船の船長の話では、昨日まであれだけいたのに、1日経つとあちこち探しまわっても反応ひとつ見つけられない…なんてことがとても多いそうです。

とにかく謎の多いこのタチウオですが、先日、大阪の海遊館におじゃまして、非常に難しいと言われるタチウオの飼育、展示を行っている担当スタッフの北谷さんにお話を伺ってきました。


海遊館タチウオインタビュー

 

可児 現在、海遊館でタチウオの展示を行われていますが、水槽はどのくらいの大きさなんですか?

北谷 幅が約6㍍、深さが約7㍍、水量は約300㌧の水槽にタチウオとアオリイカを一緒に展示しています。

可児 タチウオはどのぐらいの数入っているんですか?

北谷 現在約40尾です。

可児 タチウオはどこから連れて来たんですか?

北谷 和歌山県の由良町の白崎にある定置網に入ったものを採集して海遊館まで運んできて、1カ月くらい予備水槽でエサをやりながら飼育して12月に今の展示水槽に移動させました。

可児 網で獲れたタチウオを生かして運んでくることってできるんですね。

北谷 タチウオはウロコがないので、網ですくうと体表が傷付いて凄く弱ってしまうんですね。だから体に傷が付かないように、水ごとすくうタモを使ってすくい上げています。移動時は全てそうやっていますね。

可児 なるほど、そうなんですね。一般的な魚に比べて弱いんですかね?

北谷 そうですね。ただ、強い個体の場合には、採集してきた次の日にエサを食べたりもするので、個体にもよるのかなと。それか、獲れた時の状態がよいのか、そのへんは分からないですけどね。

可児 採集したうちのどのくらいの割合が生き残るんですか?

北谷 展示するまでに残るのは、10―20%くらいですね。10尾獲ったら1尾か2尾くらい。捕獲してすぐに死んでしまうことが多いので。

可児 タチウオの展示って期間が短いじゃないですか。それは何か理由があるんですか?

北谷 …実はずっと展示したいという気持ちはあるんですが、どんどん数を追加することができないからですね。ある程度の数がいないと展示も難しいですが、我々が採集している所では獲れる時期が年中というわけにはいかないので。

可児 年々条件をかえていったりとかはいろいろされてるんですか?

北谷 実はタチウオの展示は4年ぶりなんですよ。飼育条件の関係などでしばらくできなかったので、久しぶりに展示をしたんです。今回展示している水槽での展示もまだ2回目なので、まだまだこれから勉強していかなければいけないことばかりと思っています。

可児 ゆくゆくは常時展示される日がくるかも知れないですね。ところで、アオリイカと一緒の水槽で展示されていますけど、イカが食べられたりすることってないんですか?

北谷 タチウオがアオリイカを襲うことは今のところないですね。自然界ならお互い食べたり食べられたりしてる関係なんですけど(笑)。

可児 タチウオ水槽の反響はどうですか?

北谷 たいへん好評ですね。タチウオが立って泳いでいるのを見たことがない人は多いですからね。

可児 タチウオの飼育、展示で難しいなと思うところとか、苦労しているところってどんなところですか?

北谷 採集から展示までもたいへんですけど、体表に付く寄生虫の病気があるので、それの駆除に苦労しますね。それと、意外とエサを食べないんですよ。食べてくれれば傷などあってもすぐに治るんでしょうけど…。

可児 水槽の上からエサを落とすんですよね? それを追い掛けたりしないんですか?

北谷 とにかく食べないんです。底に落ちたエサを食べたことは見たことがないですしね。浅い水槽の時はあったかも知れないですが。今の水槽ではないですね。

可児 エサは何を与えているんですか?

北谷 今はキビナゴ、アジ、イカナゴですね。どれも冷凍のモノを解凍して与えています。それと、ごくたまにですが、生きたイワシを入れたりもしますけど。

可児 生きたイワシと冷凍のイワシとでは、タチウオの反応は違うんですか?

北谷 動くエサへの反応はいいですね。

可児 普段エサを食べないということですけど、それは照明を落としたり、閉館して人がいなくなってから食べる…ということでもないんですかね。

北谷 エサやりの時間以外は水槽内にエサがないですからね。一緒にイワシが泳いでいるとかでもないですし。イワシを入れるのも考えたんですが、寄生虫の問題があって、いろいろと難しくて。

可児 飼育している中で、タチウオの一日の行動パターンというのはどんな感じなんですか?

北谷 見ている限り、一日通して行動はそんなに大きくは変わらないですね。

可児 水温は一定ですよね。

北谷 18度くらいで一定ですね。

可児 閉館後に消灯したりとか、電気の明るい暗いはありますよね。

北谷 真っ暗にすることはないですが、照明の明るさはかえますね。切り替わった時に動きは変わりますけど。

可児 どんな風にかわるんですか?

北谷 明るくすると、ビクッとした感じで、全体的にザワザワします。場合によっては飛び上がったりする個体もいますね。光量がかわるとそんな感じです。ちなみに真っ暗にすると水槽にぶつかって怪我したりするので、真っ暗にはしないですね。予備水槽で飼育している時は明るい照明の時間のほうがエサを食べたような気がしますね。今の展示水槽では違いは分からないですが。

可児 なるほど。

北谷 それと、照明は水槽の真ん中あたりを照らすようにセットしています。そのほうが魚が真ん中に寄る傾向があるので。光の近くに寄ってくる傾向はあると思います。物陰に隠れるというよりは、明るい所を好みますね。

可児 それは魚全般じゃなく、タチウオの特徴ですよね? ほかの魚と比べてやっぱり違うんですか?

北谷 ハタとかは陰に隠れますしね。タチウオは光の下に集まります。

可児 時間帯によって泳ぐ層はかわりますか?

北谷 今の水槽ではアオリイカが下のほうに集まってワサワサしているので、タチウオは上のほうに集まってる…という感じですかね。タチウオだけだと、どうなるのか分からないですが。

可児 ほかに何かタチウオならではの特徴はどんなことがありますか?

北谷 すくう時でも面白いですよ。バックしますからね。魚すくう時って普通、頭からすくいますよね? 尻尾からすくったら逃げちゃいますから。で、頭からすくおうとしたらバックして逃げられるんですよ。後ろ向きに泳げるんですよ。そこは凄いですね。

可児 一番聞きたいことのひとつとして、エサを上から落とした時にタチウオがどうアプローチするかなんですが、自分のイメージとしては下からエサを見ていて、上に向かって食べにくるイメージなんですが、横向きに追い掛けていって食べるとか、下向きに追い掛けて行って上から咥えることがあるのかとか、そのへんどうなのかなと思って。

北谷 エサをやると、大体は下から上に向かって捕食することが多いですね。水温が高いほうがエサを追い掛けていって食べたりします。それと、生きたイワシなんかだと横向きに逃げるので、横向きに追い掛けて食べたりしますね。

可児 下向きはどうなんですか?

北谷 下向きは見た記憶がはっきりないですね。場合によってはないことはないと思うんですけど。

可児 泳ぐパターンとしては、上向き、横向きはあると思いますが、真下を向いて泳ぐことはあるんでしょうか。

北谷 私の記憶では真下はないですね。

可児 斜め下に潜っていくパターンはあるんですよね?

北谷 それも見た記憶ないですね。

可児 エサを上から落としたら、どうやって食べるんですか?

北谷 パンッて咥えて、アジとかだったらエサが大きいので、しばらく咥えていて、咥えたままパクパクパクパクって食べて、呑みこむのに大きかったら噛み切って、咥えてるほうを呑みこみます。噛み切った残りのほうはヒラヒラ…と落ちていきますよね? 咥えたほうを呑みこむのが早ければ、残りも拾います。

可児 拾う…っていうのは、ほかのタチウオが?

北谷 同じタチウオがです。咥えてモグモグして、噛み切って呑みこむ。で、残り半分がヒラヒラ落ちていくのを追い掛けて行って、下から拾って食べるんです。

可児 タチウオがエサを食べる時って、チョンチョンって突いてくるイメージで、パクって咥えてモグモグしてるってイメージ、あんまりなかったかも。生きてるエサの時ってどうなんですかね?

北谷 一生懸命泳いで追い掛けてますね。

可児 エサやりは何時とか決まってるんですか?

北谷 はっきりとは決まっていないんですが、1日に2回、開館前に1回と15時半以降でもう1回という感じです。

可児 先ほど光に近付いてくる習性があるっておっしゃってましたけど、ということは目はいいんでしょうね。

北谷 そうですね。目はよく使っていると思います。

可児 鼻がいいのかなとか思ったりもするんですが。

北谷 どうなんでしょうね。エサやりを始めてからすぐよりは、5分とか10分してからのほうが活性が上がりますね。目だったら見てすぐに食べにくるでしょうけど、しばらく経ってから食べにくるのは、エサの匂いがし始めてからなのかも知れないですね。ただ単にやる気になるのに時間が掛かるだけかも知れないですけど(笑)。

可児 それにしても、エサ咥えたままジッとしていることがあるイメージなかったんですけど…。

北谷 結構ありますよ。10分とかはないですけど、1分くらいなら咥えてたりしますね。

可児 止まった状態で?

北谷 立ち泳ぎしながら咥えてて。なかなか呑みこまないこともあります。ブリとかと違って一気に呑みこんだりはしないですよね。咥えてから吞みこむまで時間が掛かる魚ですよね。釣りでも針のないところ咥えてて掛からないというケースも多いでしょうね。

可児 タチウオって普段立って泳いでるイメージですけど、捕食時以外に横向いて泳いでいることも結構あるんですか?

北谷 水槽内は立ってる個体が多いですが、横向いて泳いでいることも普通にありますよ。

可児 そうなんですね。

北谷 タチウオについては正直、まだまだ分からないことばかりです。よく見れる環境の中で飼育することで、そういう部分が見えてくるんだろうと思います。なかなかこういう形で見れる水族館は少ないので、見て、いろんなイメージ膨らませていただきたいですね!

可児 展示は1月いっぱいですか?

北谷 1月いっぱいは展示できると思います。あわよくば2月に入っても展示できれば…と思っているんですけど。

可児 これからもますます楽しみですね! またいろいろと教えてください。

 

【取材日:2017年1月15日】

 

インタビューの日にエサを捕食するシーンもの貴重な動画も撮影しました↓

可児 宗元

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釣りライター。釣り専門誌『週刊釣場速報』副編集長兼大阪湾、瀬戸内、和歌山、鳥取、九州担当記者。数年前に大阪湾のテンヤタチウオの魅力にハマり、以来テンヤタチウオ関連の執筆、普及に勤しむ。大阪湾タチウオKINGバトル実行委員長

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